「・・・だからお前は生意気になったって言ってるんだよ。」

長い前髪を掻き上げて、少々溜め息交じりにディーノは呟く。

2月5日、午前0時過ぎ。

既にディーノの誕生日は過ぎているものの、当日は何かと忙しかった為・・・5日になってから、身内だけのパーティーがひっそり行われているのだ。
身内というだけあって、ディーノの誕生日と言いながらもディーノを中心にしていたのは最初だけ。皆すぐにばらけていつも通りの宴会騒ぎとなったのだが・・・その会場の隅、用意された誕生日ケーキの前で・・・ディーノとバジルの間には不穏な空気が漂っていた。

「そうやって、言い逃げはしないで下さい。・・・拙者の言い分だってわかってるんでしょう?」

切れ長の目がディーノを捉える。
それに負けじと、ディーノも鋭い眼光でバジルを見据えた。

「解ってる。お前の言いたい事なんざ簡単に想像もつくし、・・・でもだからって何でもお前の言う通りにしてやると思うなよ?・・・オレがお前を甘やかし過ぎてるからって、いつもがいつもそうじゃないからな。」
「・・・冗談でしょう?・・・ディーノ殿はいつも勝手です。自分の言い分ばかり通して・・・拙者のお願いなんていつも聞いて下さらないじゃないですか。」
「そんな事無ぇだろ。」
「あります!・・・今だって、拙者の言う事をこんな風に頑なに却下され・・・」
「それは、お前が馬鹿な事言うからだろ。・・・オレにだって譲れないもんがあるんだよ。」
「拙者にだってあります!」
「・・・そういう我侭ばっかり言うな。お前ももう子どもじゃないだろ・・・ったく、子どもの頃のお前の方が素直だったのにな。」
「・・・そんな・・・っ・・・子どもの頃は、・・・馬鹿だっただけです。おぬしの言うことをなんでも聞いていれば良いと思っていただけで・・・」
「・・・でも、・・・喜んでた。お前の顔が嘘か本当か、オレがわからないわけ無いだろ。」


ぐ、と言葉に詰まるバジルと、相変わらず鋭い視線を送るディーノ・・・。

そんな会場の隅の異変に気づいたのは、一応主催者である沢田綱吉で・・・彼は2人とケーキを見比べて、現状を把握すると・・・ディーノの比にならない深い深い溜め息を吐いたのだった。

「・・・2人とも、またやってるんですか・・・」

仕方なしに間に入れば、同時に縋るような視線を送られて。


「沢田殿、ディーノ殿が無茶を言うんです・・・っ」
「ツナ、コイツの我侭を何とかしてやってくれ。」


「・・・・一応聞きますけど、その無茶と我侭の内訳は?」

「折角の苺を食べてくれないんです!」
「好きなくせに苺を食べようとしないんだよ。」


「・・・・」


「今日はおぬしの誕生日でしょう!ディーノ殿に全部差し上げるのが筋ですし、拙者もそうしたいんです!何で解って下さらないんですか・・・っ!」
「オレの誕生日くらいオレの言う事聞けよな。・・・お前苺好きなんだから、全部やるって言ってるだろ。」
「拙者はディーノ殿が美味しく食べて下さればそれで満足なんですっ」
「オレだって、お前が好きなもんならお前に食わしてやりたいんだよ。」

「・・・半分ずつ食べれば良いじゃないですか・・・」

「全部あげたいんです!」
「全部やりたいんだって!」


心底くだらない、と非常に面倒な心情を隠すこともなく曝け出して、ツナは放置を決め込むと踵を返した。


何でこうも・・・大の男が2人して、こんな可愛らしい喧嘩が出来るものか。
この歳でやられると正直言ってウザイ以外の何ものでも無い。


後ろで未だに言い争っているマフィア2人の声を聞きながら、ツナは来年のディーノの誕生日には苺の無い誕生日ケーキにしてやろうと固く決意するのだった。