酒盛り。
酒盛り、
というには少し寂しいかもしれない。
メロウなジャズが狭いバーのフロアを
より湿っぽいものにする。
「それにしても飲みすぎだ。」
赤い眼の男が
スコッチのロックだったただの水を傾ける。
「だってお前のオゴリなんだろう。」
青い目の少年が澱んだ視線で応える。
卓の上には
空になった麦酒の壜がせめぎあっている。
何のことはない、
ただの誕生日会だ。
16歳になったのだから、
飲みに連れてって、
とバジルはザンザスに強請った。
それに応じて、
現在午前5時。
「お前の誕生日は“昨日”だろう。」
「そんな屁理屈、
レヴィくらいしか聞かないぞ。」
元々バジルは家光により酒に慣らされている。
本人の知らぬ間にオレンジジュースに日本酒が混入されている、
ということもしばしば。
なので、
ちょっとやそっとで酔うわけはなく、
バーのオープンからスタートした飲み会は
店中の壜麦酒を空にするくらいには深くなっていた。
「気持ち悪いよ、お前、
もっと小僧なら小僧らしく飲め。」
ザンザスは眉を顰めてぬるい水をあおる。
「ならもっと酔わせてみろ。」
バジルは唇を突き出して、
首を傾げてザンザスを挑発する。
「莫迦が。」
ザンザスは無視して卓の上の干からびた乾酪を摘み上げた。
老いた店主がレコードを取り替える。
「…ねぇ、」
「あぁ、」
「このまま時が止まればいいのに。」
ザンザスの眉がぴくりと跳ねる。
「何が言いたいんだお前は。」
「だってさ、
このまま拙者はおぬしのように
老いてカランカランになるんだぞ、
そんなのって悲劇だ。」
期待した反応と180度違うことを言われたザンザスは
期待していたことを悟らせぬよう
大袈裟に脚を組んだ。
「ペシミスト気取り。」
「まさか、
根っからのオプティミスト。」
あああ、
とバジルは頭を掻き毟って
「帰る。」
と言い、
勢い良く椅子から立ち上がった。
「さよならのキスは、」
「もう子どもじゃないからしない。」
「じゃあお前はずっと子どもでいろ。」
ふらふらと扉に向かって歩き始めていたバジルを、
ザンザスは乱暴に引き寄せる。
「お誕生日おめでとう、バジル君。
君は永遠の16歳だ。」
「うるさい、ザンザスじじい、
今度は麦酒なんかじゃ済まさないからな、」
扉の外は、
もう明るんでいる。